教育に対する私の考え My Basic Idea for Education
大学は卒業要件単位数の単位をとらなければ卒業できません.そもそも「単位」とはなんなのでしょう.それは大学設置基準の中にあります.
大学設置基準 第二十一条 各授業科目の単位数は、大学において定めるものとする.
2 前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。
一 講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。
三 一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
3 前項の規定にかかわらず、卒業論文、卒業研究、卒業制作等の授業科目については、これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には、これらに必要な学修等を考慮して、単位数を定めることができる。
以上のように単位とは「これだけの時間をかけて勉強しました」ということを認定するものです.しかし,授業時間だけでは単位修得に必要な学習時間が足りません.一般的には,1コマの授業につき,1〜1.5コマ分の予習と1〜1.5コマ分の復習を必要とすると言われています.ただ時間をかければよいということではありませんが,授業以外の学習時間がまったくないようでは単位の修得は難しいでしょう.私の授業については予習よりも復習に重点をおいて勉強してほしいと思います.(次の「数学の勉強について」を参照)
また,大学の単位については次の論考も参考に.
技術者とは工学を駆使し,技術にかかわる仕事をする職業人である.とあります.この中に出てくる技術,工学とはどのようなものなのでしょうか.
技術とは自然や人工の事物・システムを改変・保全・操作して公共の安全,健康,および福祉に有用な事物や快適な環境を作り出す手段である.それらの人間の行為に知識体系を与える学問が工学である.つまり,技術とは「人類のためになるモノ」をつくる手段であり,そのための学問が工学なんです. さらに,
工学とは数学と自然科学を基礎とし,ときには人文社会科学の知見を用いて,公共の安全,健康,福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問である.工学は,その目的を達成するために,新知識を求め,統合し,応用するばかりでなく,対象の広がりに応じてその領域を拡大し,周辺分野の学問と連携を保ちながら発展する.また,工学は地球規模での人間の福祉に対する寄与によってその価値が判断される.とあるように,数学は工学の基礎のひとつなんです.さらに,自然科学を記述するのにも数学が使われますから,工学において数学が大切であることは明白です.
工学教育とは技術者・研究者に必要な工学におけるスキルと知識を与えることである.スキルとは技術者に必要な工学におけるスキルの2つ目は,「与えられた問題に対してただ解をみつけるだけではなく,なぜそのような解が得られるのか,根拠を示して論理的に説明できなくてはならない」と述べていると解釈できます.論理的な考え方や説明する能力は数学を学ぶ中で訓練できます.このような能力を身につけてもらうことが私の授業の大きな目標です.
- 物事を正しく行うことの出来る能力であり,また
- 問題と解答との間のスぺースを埋めることのできるプロセスを構成する能力である.
最後に,「数学ガイダンスhyper(技術評論社)」という本からの一節を紹介します.これは数学科の学生に向けて書かれたものですが,他の学部の学生にも有益でしょう.ぜひともこれを読んで今後の大学生活を有意義なものにして欲しいと思います.
本を読もう――自立への第一歩/山田光太郎
大学生のみなさん,大学で「勉強する」とはどういうことだと思いますか.(中略)講義を聴いて,ノートをとって,問題を解いて,試験前に公式や定理を覚えて,単位をとって,そんなことを思い浮かべるでしょうか.このような方法で学生諸君に情報を提供し,知識を得てもらう.それも大学が学生諸君に勉強してもらうためのサービスの一部ですが,ほんの一部でしかありません.
大学がもっとも自信をもって提供できるサービスは「本」と「人」.(中略)このサービスの特徴は「サービスを受ける側に明確な意思がないと提供されない」ことにあります.あなたが出向かなければ図書館は存在しないし,訪ねてみなければ教員は教壇の上の映像に過ぎません.なぜ,こんなに不親切なのでしょう.それは,大学が「知識を教える」ところではなく,学生諸君が「知的に自立する」ことを助けるところだからです.(中略)
そこで,皆さんには,自ら知識を得ることを体験して欲しいのです.(中略)本当に知りたいこと,本当に面白いことは誰も歩いたころのない道の先にあります.そういうところまで歩いて行くことができるために,自分の頭の使い方を身に着けてください.それが知的自立への第一歩です.